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凡事を徹底できる企業は、なぜ強くなるのか【理念経営No.54】

  • 執筆者の写真: 西里喜明
    西里喜明
  • 8月10日
  • 読了時間: 5分

~当たり前を徹底し成長するための「平凡の非凡化」という境地~


企業経営において、革新的な戦略や大胆な投資が注目を集めることは多い。しかし、実際に組織を強くし、長期的な競争力を生み出すのは、派手な戦略ではなく、日々の平凡な行動の積み重ねである。


どれほど優れた経営戦略を描いても、それを実行し続ける組織の基礎体力がなければ成果は出ない。だからこそ、経営戦略の実践・遂行においても、「継続は力なり」と「凡事徹底」は極めて有効である。


「継続は力なり」とは、単に意志の強さを示す言葉ではない。経営においては、むしろ「続けられる仕組み」をつくることこそが重要である。


強い意志も重要であるが、人は意志だけでは継続できない。だからこそ、毎日の数字確認、顧客対応、職場の清掃、理念の共有といった地味な行動を、仕組みとして組織に根付かせる必要がある。


これらは一見すると小さな行動だが、半年、一年、三年と続けることで、企業の基礎体力を大きく引き上げる。


一方、「凡事徹底」とは、誰でもできる当たり前のことを、誰もできないレベルまで磨き上げることを意味する。


挨拶、清掃、報連相、期限遵守、顧客対応、在庫管理、数字の確認。これらはどの企業でも掲げている基本動作だが、実際に徹底できている企業は驚くほど少ない。


凡事を徹底することは、組織の基礎体力を高めるだけでなく、企業の強力な強みとなる。

なぜなら、凡事を徹底できる企業は、環境変化への適応力が高く、改善が進み、トラブルが減り、結果として成長速度が速くなるからである。

では、凡事が徹底されない企業はどうなるのか。


ここで、ある企業の事例を紹介したい。

その企業は、経営会議で「立派な改革案」を次々と決めていた。

朝礼の質を高める。顧客対応マニュアルを刷新する。社内コミュニケーションを改善する。品質チェックを強化する……。

どれも素晴らしい取り組みであり、紙の上では完璧だった。

ところが、数週間たち、半年たつ頃には、誰もその取り組みを口にしなくなった。

朝礼は元に戻り、マニュアルは棚に眠り、コミュニケーション改善は掛け声だけになり、品質チェックは従来のやり方に戻った。

理由は単純である。

「決めただけで、続ける仕組みがなかった」

そして、

「平凡な行動を徹底する文化がなかった」

からだ。

この企業は、立派なことを決める力はあったが、凡事を継続する力がなかった。

つまり、戦略を描く力はあっても、戦略を遂行するための基礎体力が不足していたのである。

さらに問題なのは、「どうせそのうち誰も言わなくなる」「そのうちやらなくなる」という意識が、組織風土として定着してしまうことである。

一度こうした風土が形成されると、新しい取り組みを始めても、「今回もどうせ続かない」と社員に受け止められてしまう。そうなれば、どれほど立派な改革案を掲げても、組織は動かない。


対照的に、別の製造業の企業では、品質トラブルが続く中で「基本に立ち返る」ことを決断した。

当たり前のレベルを上げることを基本方針とし、毎朝の挨拶を徹底する、作業台の清掃を毎日5分だけ必ず行う、報連相をその日のうちに完了する。

この三つだけを、経営者自身が率先して毎日続けた。

すると、半年後には職場の雰囲気が明るくなり、一年後には小さなミスが激減した。報連相が早くなり、改善活動が進み、人が育つ環境ができ、品質トラブルはほぼ消えた。

経営者は、

「凡事を徹底したら会社の空気が変わった。空気が変わると数字が変わる」

と語った。


この二つの企業の違いは、決して戦略の質ではない。

「凡事を継続できるかどうか」

ただそれだけである。


「継続」と「凡事徹底」は、別々の概念ではない。むしろ、組み合わせることで強力な経営哲学となる。

凡事を徹底するには継続が必要であり、継続を価値あるものにするには、何を凡事として選ぶかが重要である。

つまり、経営者が選ぶべきなのは、特別なことを短期間やることではなく、平凡なことを長期間続けることである。

ただし、ここで注意したいのは、凡事徹底とマンネリ化は同じではないということである。

同じことを繰り返しているように見えても、凡事徹底は「当たり前の水準を高める」取り組みである。一方、マンネリ化は、目的や意味を考えず、ただ同じことを繰り返す状態である。


凡事徹底は、毎日の行動を通じて「もっと良くできないか」と改善を重ねることが重要であり、マンネリ化は避けなければならない。


凡事徹底と継続は、企業文化をつくる。

企業文化は、時として戦略よりも強い力を持つ。文化が強い企業には、どのような環境変化にも適応できる企業体質ができていく。

どれほど優れた戦略を描いても、それを実行するのは人であり、組織である。

だからこそ、戦略を遂行するためには、凡事を徹底し、継続する文化をつくる組織と人材が不可欠なのだ。

経営者が凡事を明確に定義し、仕組み化し、継続を可能にする環境を整え、成果を見える化し、自ら率先して実行する。

そうすることで、組織は確実に変わっていく。

経営とは、平凡を非凡に変える仕事である。

平凡を徹底し、継続し、仕組み化し、文化として根付かせること。

これこそが、企業の基礎体力を高め、長期的な競争力を生み、持続的成長を可能にする。

VUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)の時代にあっても、凡事徹底は力を発揮する。

特別なことを始める前に、まず自社の「当たり前」を見直してみてはどうだろうか。

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