当たり前の先を考えることで、経営の真理をベースに企業の成長を支える①
- 西里喜明

- 20 時間前
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~当たり前のレベルを上げることが成長につながる~
自社を取り巻く内部環境、外部環境をどのように認識するか。
同じ事実を見ても、そのとらえ方によって解釈は異なり、打つ手も変わってくる。そして、その積み重ねが、最終的な経営成果の違いとなって表れる。
そこには、経営における一つの「真理」が働いているように思う。
中小企業を活性化し、成功を探求する経営誌「理念と経営」の9月号に掲載された「古永泰夫のマーケティング塾」に、興味深い話が紹介されていた。
ある新聞記者が、松下幸之助翁に、
「あなたの会社は急速な発展を遂げてこられましたが、その秘訣を聞かせてくれませんか」
と尋ねた。
すると翁は、
「あなたは雨が降ったらどうされますか?」
と問い返した。
記者が、
「そりゃあ傘を差します」
と答えると、松下幸之助翁は次のように述べたという。
「そうでしょう。雨が降れば傘をさすのです。そこに私は発展の秘訣というか、商売のコツ、経営のコツがあると考えているのです。」
「雨が降れば傘をさす」。
あまりにもシンプルな話である。
誰もが「そんなことは当たり前だ」と思うだろう。
しかし、本当にその「当たり前」を、経営の中で徹底できている企業はどれほどあるだろうか。
私は、ここに経営の本質の一つがあると思う。
多くの企業が環境変化に翻弄され、業績を落としていく。その真因は、「雨が降っているのに傘をささない」こと、あるいは「雨が降っていることにすら気づいていない」ことにあるのではないだろうか。
市場の縮小、顧客離れ、競合の台頭、人材不足、原材料価格の上昇など、企業を取り巻く変化は絶えず起きている。
これらは、企業にとっての「雨」である。
そして、その雨に対して適切な対応をすることが「傘をさす」ということである。
ところが、雨が降っているにもかかわらず、
「景気が悪いから仕方がない」
「人がいないから仕方がない」
「時代が変わったから仕方がない」
と、外部環境を理由にしてしまうことがある。
しかし、雨が降ることに文句を言っても、雨は止まない。
「そのうち晴れるだろう」と根拠のない楽観主義で雨宿りをしているうちに、企業の体力が失われ、気づいたときには手遅れになっていることもある。
だからこそ、まず必要なのは、雨が降っているという事実を素直に受け止めることである。
では、現代の企業経営における「雨」とは何だろうか。
少子高齢化による労働人口の減少、原材料やエネルギーコストの高騰、生成AIをはじめとするデジタル技術の急速な進化、消費者の価値観の多様化など、企業を取り巻く環境は大きく変化している。
これらは、好むと好まざるとにかかわらず、企業に降り注ぐ「雨」である。
では、「傘」とは何か。
それは、企業がその環境変化に対応するための具体的な「打ち手」である。
ただし、闇雲に傘を広げればよいわけではない。
強風の中で軸のブレた傘をさせば、骨組みは折れてしまう。
経営において、その傘の中心となる軸、すなわち「中棒」にあたるものが、私は「経営理念」だと考えている。
自社は何のために存在するのか。
誰に、どのような価値を提供するのか。
何を大切にして経営していくのか。
この軸が明確であれば、環境が変化しても、単に流されるのではなく、自社らしい対応策を考えることができる。
つまり、
環境の変化を素直に受け止める。その変化に対して、経営理念に基づいて考える。そして、具体的な行動に移す。
この繰り返しが、企業経営の基本なのではないだろうか。
しかし、これは一朝一夕にできるものではない。
日頃から「当たり前のこと」を真摯に受け止め、冷静かつ客観的にとらえ、着実かつ誠実に対応できる組織風土と企業体力をつくっておく必要がある。
経営環境は日々変化している。
同じ日、同じ週、同じ月、同じ年は決してない。
昨日まで問題なかったことが、今日は問題になっているかもしれない。
昨日まで売れていた商品が、来年も売れるとは限らない。
分かっている。
しかし、「分かっている」ことと、「真摯に受け止めて行動する」ことは違う。
そして、そこに企業間の差が生まれる。
同じ雨が降っていても、すぐに傘をさす企業がある。
雨が降っていることに気づかない企業もある。
雨が降っていることは分かっていても、「まだ大丈夫」と傘をささない企業もある。
その違いは、その場では大きな差に見えないかもしれない。
しかし、半年後、一年後、三年後には、企業の姿としてはっきりと表れてくる。
だからこそ、経営者には「経営の真理」を受け止める力が必要である。
私は、それを「経営者心理」と呼びたい。
現実を直視する。
都合の悪いことから目を背けない。
環境の変化を言い訳にしない。
さらに、その「当たり前」のレベルを一段、二段と引き上げていく。
それが企業の成長につながるのではないだろうか。
「雨が降れば傘をさす」。
一見すると、誰もが知っている当たり前のことである。
しかし、経営において大切なのは、その当たり前を知っていることではない。
当たり前を実践すること。当たり前を徹底すること。そして、当たり前の先まで考えること。
そこに、企業の成長につながる経営の真理があるように思う。
次回は、「当たり前の先」を考えることで、企業経営の基盤づくりに成功した事例を紹介しながら、さらに検証していきたい。



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