【進化系管理会計コラム】第2回:損益分岐点は、「売上高」で考えるから分かりにくくなる
- 木場一緒

- 4 時間前
- 読了時間: 4分

今回は、損益分岐点【売上高】について考えたい。
タイトルを「パッと」見て、どう思っただろうか。
損益分岐点というと、売上高なのではないか。
売上高以外に、何があるのか。
いきなりだが、日商簿記の工業簿記の問題で考えてみよう。
【設例】
販売単価:50,000円
変動費:製品1個あたり
・変動製造原価:27,000円
・変動販売費:3,000円
固定費合計:10,000,000円
・製造間接費:6,000,000円
・販売費:2,500,000円
・一般管理費:1,500,000円
年間販売数量実績:800個
※期首・期末に製品・仕掛品はないものとする。
この内容は、2級で出題されるレベルである。

① まず、損益分岐点【販売数量】が問われる
1個あたりの貢献利益(=販売単価-変動費)
=50,000円-27,000円-3,000円
=20,000円
固定費10,000,000円を、この貢献利益で割る。
10,000,000円÷20,000円=500個
となる。

これが、損益分岐点【販売数量】である。
どうだろう。
② 次に、損益分岐点【売上高】が問われる
販売単価50,000円×損益分岐点販売数量500個
=25,000,000円

これが、損益分岐点【売上高】である。
特に難しさは感じないのでは。
③ そして、利益12,000,000円を出すための【販売数量】が問われる
追加で必要な貢献利益:12,000,000円
1個あたりの貢献利益:20,000円
追加で必要な貢献利益12,000,000円を、この貢献利益で割る。
12,000,000円÷20,000円=600個
となる。

損益分岐点500個+利益確保のための600個
=1,100個
これが、利益12,000,000円を出すための【販売数量】である。
どうだろう。
ここまで分かれば、損益分岐点のエッセンス、すなわち本質を十分に把握できている。
損益分岐点というと売上高なのではないか。
売上高以外に何があるのか。
それが、最初の問いであった。
答えは、
損益分岐点【販売数量】
である。
工業簿記で最初に習うのは、損益分岐点【売上高】ではなく、損益分岐点【販売数量】である。
ところが、簿記1級になると、
損益分岐点売上高=固定費÷(1-変動費率)
という数式の世界になる。
(1-変動費率)とは、貢献利益率のことである。
1個あたりの貢献利益(=販売単価-変動費)は20,000円であった。
会計で使う「率」は、その多くが対売上高比率である。
したがって、
貢献利益率
=20,000円÷50,000円×100
=40%
となる。
これを損益分岐点売上高の式へ当てはめると、
固定費10,000,000円÷貢献利益率40%=25,000,000円
となる。
どうだろうか。
少し怪しくなってきたのではないだろうか。
何が分かりにくくなったのだろうか。
答えは、
「貢献利益率40%」
である。
「1個あたりの貢献利益20,000円」であれば、誰でも理解できる。
貢献利益率40%とは、
売上高1円あたりの貢献利益が0.4円
という意味である。
「分かったような、分からないような……」
もし現場の営業職や調達係に、
「売上高1円あたりの貢献利益が0.4円になるよう考えてほしい。」
と言ったら、どう感じるだろうか。
その考え方は、本当に全員で共有できるものなのだろうか。
「売上高1円あたりの貢献利益が0.4円」という割合。
これが、損益分岐点【売上高】の分かりにくさの正体である。
つまり、全員が損益分岐点を理解し、共通言語にするのであれば、【販売数量】で考える方が分かりやすい。
メンタルモデルを転換してみてほしい。
全員が損益分岐点を理解する方法を、次回さらに掘り下げていきたい。
※卸売・小売業など多品種を扱う業種では、(単一商品・製品の)「販売数量」だけでは、
上手く現場に落としにくいと感じられるかもしれません。
「売上高」でも「販売数量」でも足りない場合は、どうしたらいいのか?
一緒に考えていきましょう。
株式会社CSDコンサルタンツ
中小企業診断士 木場 一緒
このシリーズは、全12回でお届けします。次回以降も、ぜひお読みください。
第1回 もし全社員が損益分岐点を使えるようになったら?
第2回 損益分岐点は、「売上高」で考えるから分かりにくくなる。
第3回 損益分岐点は、「いくら売るか」ではなく、「いくら利益が出るか」で考える。
第4回 販売数量が「一」増えると、自社の原価と利益は、いくら増えるのだろうか。
第5回 損益分岐点は、解説グラフが変わるだけで、驚くほど分かりやすくなる。
第6回 なぜ、損益分岐点解説グラフの売上高線は、原点から45度なのだろうか。
第7回 損益分岐点解説グラフの横軸は、本当は何を表しているのだろうか。
第8回 損益分岐点は、本当は中学生でも分かる。
第9回 原価をもっと直接に考えれば、利益はもっと簡単になる。
第10回 利益を最大化したい。しかし、その会計学の前提は現実的なのだろうか。
第11回 社員が現場で意思決定できて、初めて会計は「使える道具」になる。
第12回 全社員が経営者と同じ目線で意思決定する会社へ。
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