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【進化系管理会計コラム】第2回:損益分岐点は、「売上高」で考えるから分かりにくくなる

執筆者の写真: 木場一緒
木場一緒
8月27日
読了時間: 4分

今回は、損益分岐点【売上高】について考えたい。


タイトルを「パッと」見て、どう思っただろうか。


損益分岐点というと、売上高なのではないか。

売上高以外に、何があるのか。


いきなりだが、日商簿記の工業簿記の問題で考えてみよう。


【設例】

  • 販売単価:50,000円

  • 変動費:製品1個あたり

     ・変動製造原価:27,000円

     ・変動販売費:3,000円

  • 固定費合計:10,000,000円

     ・製造間接費:6,000,000円

     ・販売費:2,500,000円

     ・一般管理費:1,500,000円

  • 年間販売数量実績:800個

     ※期首・期末に製品・仕掛品はないものとする。


この内容は、2級で出題されるレベルである。



① まず、損益分岐点【販売数量】が問われる

1個あたりの貢献利益(=販売単価-変動費)

=50,000円-27,000円-3,000円

=20,000円


固定費10,000,000円を、この貢献利益で割る。

10,000,000円÷20,000円=500個

となる。



これが、損益分岐点【販売数量】である。

どうだろう。


② 次に、損益分岐点【売上高】が問われる

販売単価50,000円×損益分岐点販売数量500個

=25,000,000円



これが、損益分岐点【売上高】である。

特に難しさは感じないのでは。


③ そして、利益12,000,000円を出すための【販売数量】が問われる

追加で必要な貢献利益:12,000,000円

1個あたりの貢献利益:20,000円


追加で必要な貢献利益12,000,000円を、この貢献利益で割る。

12,000,000円÷20,000円=600個

となる。



損益分岐点500個+利益確保のための600個

=1,100個


これが、利益12,000,000円を出すための【販売数量】である。


どうだろう。

ここまで分かれば、損益分岐点のエッセンス、すなわち本質を十分に把握できている。


損益分岐点というと売上高なのではないか。

売上高以外に何があるのか。


それが、最初の問いであった。


答えは、

損益分岐点【販売数量】

である。


工業簿記で最初に習うのは、損益分岐点【売上高】ではなく、損益分岐点【販売数量】である。


ところが、簿記1級になると、

損益分岐点売上高=固定費÷(1-変動費率)

という数式の世界になる。


(1-変動費率)とは、貢献利益率のことである。


1個あたりの貢献利益(=販売単価-変動費)は20,000円であった。

会計で使う「率」は、その多くが対売上高比率である。


したがって、

貢献利益率

=20,000円÷50,000円×100

=40%

となる。


これを損益分岐点売上高の式へ当てはめると、

固定費10,000,000円÷貢献利益率40%=25,000,000円

となる。


どうだろうか。

少し怪しくなってきたのではないだろうか。


何が分かりにくくなったのだろうか。

答えは、

「貢献利益率40%」

である。


「1個あたりの貢献利益20,000円」であれば、誰でも理解できる。

貢献利益率40%とは、

売上高1円あたりの貢献利益が0.4円

という意味である。


「分かったような、分からないような……」


もし現場の営業職や調達係に、

「売上高1円あたりの貢献利益が0.4円になるよう考えてほしい。」

と言ったら、どう感じるだろうか。

その考え方は、本当に全員で共有できるものなのだろうか。


「売上高1円あたりの貢献利益が0.4円」という割合。

これが、損益分岐点【売上高】の分かりにくさの正体である。


つまり、全員が損益分岐点を理解し、共通言語にするのであれば、【販売数量】で考える方が分かりやすい。

メンタルモデルを転換してみてほしい。


全員が損益分岐点を理解する方法を、次回さらに掘り下げていきたい。



※卸売・小売業など多品種を扱う業種では、(単一商品・製品の)「販売数量」だけでは、

 上手く現場に落としにくいと感じられるかもしれません。

 「売上高」でも「販売数量」でも足りない場合は、どうしたらいいのか?

 一緒に考えていきましょう。



株式会社CSDコンサルタンツ

中小企業診断士 木場 一緒


 

このシリーズは、全12回でお届けします。次回以降も、ぜひお読みください。

 

第1回 もし全社員が損益分岐点を使えるようになったら?

第2回 損益分岐点は、「売上高」で考えるから分かりにくくなる。

第3回 損益分岐点は、「いくら売るか」ではなく、「いくら利益が出るか」で考える。

第4回 販売数量が「一」増えると、自社の原価と利益は、いくら増えるのだろうか。

第5回 損益分岐点は、解説グラフが変わるだけで、驚くほど分かりやすくなる。

第6回 なぜ、損益分岐点解説グラフの売上高線は、原点から45度なのだろうか。

第7回 損益分岐点解説グラフの横軸は、本当は何を表しているのだろうか。

第8回 損益分岐点は、本当は中学生でも分かる。

第9回 原価をもっと直接に考えれば、利益はもっと簡単になる。

第10回 利益を最大化したい。しかし、その会計学の前提は現実的なのだろうか。

第11回 社員が現場で意思決定できて、初めて会計は「使える道具」になる。

第12回 全社員が経営者と同じ目線で意思決定する会社へ。


 

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